インビ2
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中々可愛い所があるじゃないか。勇樹がそう思ったのは、この時までだった。 「周りの連中は相変わらず進歩がない。はっきり言って足手まといだ。猿でももう少し、マシな動きが出来ると思うのは僕だけじゃないと思う」 「……!」  勇樹は、知らず、指の骨をバキバキ鳴らしていた。  もしここに『ハウル・オブ・ヒート』があったなら、条件反射で引き金を引いていたに違いない。 「お、落ち着いて勇樹君!」  小さな声で注意すると共にその腕を取る一枝だが、 「それに、教官も相変わらずだ」  自分について何か言われている事に気付き、耳を澄ます。 「いつもヘラヘラ笑っていて、何を考えているのかわからない。愛想笑いするだけなら、他の場所に行ってしてもらいたいもんだ」  とどめに、ハン、と鼻を鳴らす。  白髪に隠れていない左側の頬が、ヒクヒク引きつっていた。  もし、この場に一枝か勇樹、どちらか一人だけで来ていたら、大変な事になっていただろう。 「僕か? 僕は順調だ。あの馬鹿どもが足を引っ張らない限り、失敗するなんて考えられない」 「……良い度胸してるじゃねえか」 「勇樹君、ちょっと待って」  今にも病室のドアを蹴破りかねない勇樹を、右手で制する一枝。 「何すか? 待てって言われても、あそこまで言われて」 「お兄さんの声が、聞こえない」  言われて初めて気付いた。誠二の罵詈雑言のせいで頭に血がのぼっていたのだろうか。確かに、誠二以外の声が聞こえてこない。 「なあ、兄さんはどうなんだ?」  だが、やはり返事は聞こえない。 「……いつになったら戻ってくるんだ、兄さん?」  誠二の声が、ここで初めて弱々しさを見せた。 「……父さんも母さんも、あの事故で死んでしまった。生き残っているのは、兄さんと僕だけだ」  兄さんは、それを知っているのかい? 「……行こうか」  さすがにこれ以上聞くのは、気が咎める。  勇樹は頷き、一枝と共にその場を離れた。